【衝撃】薬剤師の求人倍率が9年で1/3に暴落していた

「薬剤師は売り手市場」「どこでも転職できる」——そんな常識が、今まさに崩壊しつつあることをご存知でしょうか。

厚生労働省の統計データが示す衝撃的な事実があります。2015年に7.18倍だった薬剤師の有効求人倍率が、2024年には2.34倍まで急落しているのです。わずか9年間で、求人倍率は約1/3に減少しました。

しかし、この数字だけを見て「薬剤師の転職が厳しくなった」と判断するのは早計です。なぜなら、全国平均3.14倍という数字の裏には、とんでもない”格差”が隠されているからです。

データで見る薬剤師求人倍率の推移:9年間の激変

まず、薬剤師の有効求人倍率がどのように変化してきたのか、具体的な数字で確認しましょう。

薬剤師有効求人倍率の推移(2015年〜2024年)

年度有効求人倍率前年比
2015年7.18倍
2016年約6.0倍-16.4%
2017年約5.0倍-16.7%
2018年約4.0倍-20.0%
2019年約3.0倍-25.0%
2020年1月4.76倍+58.7%
2020年10月3.55倍-25.4%
2021年3月2.86倍-19.4%
2022年3月2.82倍-1.4%
2023年3月3.05倍+8.2%
2024年3月3.38倍+10.8%
2024年9月3.14倍-7.1%

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」、リクナビ薬剤師転職市場調査薬剤師求人倍率低下の現実

この表から読み取れる重要なポイントは3つあります。

①2015年から2019年まで一貫して下落
「黄金期」と呼ばれた2015年の7.18倍から、4年間で約3倍まで急落。薬剤師数の増加と薬局の淘汰が進んだ時期です。

②2020年のコロナショック
一時的に4.76倍まで回復したものの、これは求職者の減少(転職控え)による見かけ上の上昇。その後再び急落しています。

③2023年以降の微増傾向
在宅医療の拡大や病院薬剤師不足を受けて、わずかながら回復傾向にあります。

しかし、ここで注目すべきは「全職種平均1.3倍」に比べれば、薬剤師の3.14倍は依然として高水準という事実です。問題は、この「平均値」の裏に隠された格差なのです。

栃木県9.72倍 vs 神奈川県1.42倍:薬剤師を巡る”地理格差”の正体

全国平均3.14倍という数字に騙されてはいけません。都道府県別のデータを見ると、同じ日本国内でも、まるで別の国のような求人環境が存在することが分かります。

都道府県別薬剤師有効求人倍率ランキング(2024年)

【求人倍率トップ5】

  • 栃木県:9.72倍(薬剤師1人に約10件の求人)
  • 青森県・福井県:8倍超(推定)
  • 岩手県・山形県:7倍前後(推定)
  • 沖縄県:6倍前後(推定)
  • 東京都:2.98倍

【求人倍率ワースト5】

  • 神奈川県:1.42倍
  • 千葉県:1.46倍
  • 埼玉県:1.64倍
  • 大阪府:2倍前後(推定)
  • 愛知県:2倍前後(推定)

出典:厚生労働省「都道府県別有効求人倍率」、薬剤師採用調査(marugoto inc.)

この数字が意味することは明確です。栃木県で薬剤師として働けば、神奈川県の約7倍近い選択肢があるということです。

なぜこれほどの地域格差が生まれるのか?

厚生労働省の「薬剤師偏在指標」によると、47都道府県中36県が偏在指標1.0を下回っており、全国的に薬剤師が不足しているのが実態です。

しかし、大都市圏では状況が全く異なります。

【首都圏の特殊事情】

  • 薬科大学の集中:東京・神奈川・千葉には多数の薬学部が存在し、毎年大量の新卒薬剤師を輩出
  • 薬局の飽和:狭いエリアに調剤薬局が乱立し、競争が激化
  • 転職者の集中:「都会で働きたい」という希望者が集中し、供給過多に

一方、地方では正反対の現象が起きています。

【地方の深刻な人材不足】

  • 薬剤師の絶対数不足:人口10万人あたりの薬剤師数が沖縄県148.3人、福井県157.0人など、全国平均198.6人を大きく下回る
  • 若手の流出:地方出身者も都会での就職を希望し、地元に戻らない
  • 高齢化の進展:地方ほど高齢化率が高く、薬剤師需要は増加する一方

この結果、「同じ薬剤師でも、住む場所で人生が変わる」という状況が生まれているのです。

年収300万円差がつく”県境”の話

地域格差は求人倍率だけではありません。年収にも驚くべき差が存在します。

都道府県別薬剤師平均年収ランキング(2024年公開・2023年調査結果)

順位都道府県平均年収求人倍率傾向
1位広島県706.0万円
2位秋田県680.5万円
3位宮城県672.6万円
4位鹿児島県644.5万円
5位長野県639.8万円
6位島根県635.7万円
7位高知県633.1万円
8位岐阜県633.0万円
9位茨城県627.8万円
10位三重県627.4万円
11位大阪府606.7万円
12位新潟県600.3万円
13位佐賀県597.8万円
14位石川県597.6万円
15位富山県597.0万円
16位愛媛県588.7万円
17位栃木県587.0万円超高
18位福島県584.5万円
19位静岡県580.9万円
20位群馬県580.0万円
21位香川県575.8万円
22位青森県573.6万円超高
23位福岡県572.2万円
24位鳥取県565.4万円
25位徳島県563.1万円
26位和歌山県560.5万円
27位北海道560.4万円
28位愛知県558.8万円
29位山形県557.6万円
30位山口県557.4万円
31位岡山県556.2万円
32位福井県555.3万円超高
33位滋賀県552.2万円
34位熊本県549.6万円
35位岩手県548.8万円
36位奈良県546.7万円
37位兵庫県540.8万円
38位沖縄県540.7万円超高
39位長崎県537.3万円
40位大分県535.3万円
41位東京都532.4万円
42位宮崎県522.5万円
43位京都府499.7万円
44位埼玉県492.2万円
45位千葉県491.1万円
46位神奈川県484.2万円超低
47位山梨県466.5万円

全国平均:577.9万円

出典:マイナビ薬剤師「薬剤師の平均年収・給与ランキング」(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より